マシュー・サイド 著
人生は失敗の連続である。
問題は失敗から学んで改善することができるか、いつまでも失敗を繰り返すのか。できれば、他人の失敗から学ぶことができるかだ。
これは個人・組織を問わない。失敗への取り組み方の違いにより、その後の成長は大きく異なる。アメリカンドリームを叶えたフォードやトランプなどの大富豪も、勝ち続けて上り詰めたのではない。何度倒産し失敗しても、0からいやマイナスから這い上がってきた。マイケルジョーダンやベッカムも、決して天才ではない。人一倍練習し、何度失敗しても、なぜ失敗したのか研究・改善し続けてきた結果である。
しかし、これは根性論ではない。科学である。ビジネス・スポーツに限らず、この世のあらゆる問題は実証実験で改善できる。根拠のない先入観や検証を伴わない空論から予測できるほど、この世界は甘くない。ひたすら、科学的に統計学的に対照実験を繰り返すしかない。メルセデスベンツはレースで、5万chものセンサーを付けてデータを集めている。グーグルも年間数万件におよぶ実験と検証を繰り返している。1%の改善があった。なぜ違いが出たのか?それを解明することで、2%改善できるか? 気が遠くなるほどの改善の蓄積、マージナルゲインをできる者が頂点に立てる。
百年以上の歴史を持つツールドフランスで、イギリスチームが総合優勝を獲ったことは一度もなかった。それをチーム・スカイは5年以内に達成すると宣言した。人々は笑ったが、3年で成し遂げた。アメリカ伝統のホットドッグ早食い競争で、小柄な日本人が史上最高記録を叩き出して優勝した。しかし、これらは奇跡でも偶然でもない。唯一違ったのは、マージナルゲインの才能が優れていたのである。
如何にして膨大なデータから改善策を導き出すか、その分析は決して容易ではない。戦時中、爆撃機の撃墜を減らすため、装甲強化の指令が出た。命からがら帰還した弾痕まみれの機体を散々調べた挙句、なぜか損傷が最も少ないコックピットや尾翼を徹底強化した。なぜなら、その箇所に被弾すると帰還せずに墜落していたのだ。見えているものが全てではない。見えない部分に大きな改善点が隠れていることもある。
マージナルゲインは超人的な忍耐・精神力、そして優れた頭脳を持つ選ばれた者しかできないのだろうか? 私はそうは思わない。好きなことをやっている時、我々はいつも無意識にマージナルゲインを行なっている。考えて考え抜いて実行して、失敗と成功を繰り返して・・。理論と検証のフィードバックが改善に繋がっていくことが楽しいのである。誰もが成長型マインドセットを持っている。
頂点に立つ者と立てない者の違い。それはその問題を誰よりも楽しんでいるか、いないかの違いだけだ!
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